特別展 北斎と暁斎 ―奇想の漫画 - 太田記念美術館


葛飾北斎河鍋暁斎を並べて展示、二人の鬼才っぷりを見比べてみよう
みたいな。


美術館入ってすぐ、北斎の冨嶽三十六景「凱風快晴」っていうタイトルの絵が観れるんだけど、
英語に訳すと"A Mild Breeze on a Fine Day"だって、なんて爽やか。
江戸文化でわからないことがあっても、解説や題の英訳を読むとわかることが多々ある。


二人に共通して凄いのは観察力。
北斎は『北斎漫画』でスケッチ的なものをめちゃくちゃ描いてたらしく、大体両手におさまるほどの小さな冊子に、人間や風景など題材のジャンル問わず、所狭しと描かれてあった。
それから筆の持ち方とか絵の描き方を自らの絵でレクチャーしたりもして、だいぶ親切だなと思った。こんな有名画家が絵の描き方を教えてくれるなんて。

暁斎は人物を描くときに骨格とか筋肉の動きに気を使ってたらしい。まず人物の外枠を描いて、次骨格とか筋肉描いて、それで上から服を着せる…っていう版下絵があった。
それから、針で描いたんじゃないの…と思ってしまうほど細い線の連続で描いた魚か何かの絵があって、観てるだけで気が遠くなりそうだった。
細やかな作業が得意だったのだろうか。


北斎はやっぱり風景画が印象的で、滝とか風とか、静止画で捉えづらいものを描くのがめちゃくちゃ上手い。
滝だったら、滝口→滝(流れている水)→滝壺、で三種類の水の流れがあるのを、一枚で描き分けきれている絵が何枚かあった。たぶんそういうのを意図して描いたんだろうと思うけど、絵の構成力とそれを描き切れる技と両方無いと難しいのでは…
個人的には、強風の中を歩いている人々を描いた絵に感動しました。タイトルが思い出せません…。なんで静止画なのに、風強そうだなって感じ取れるんだろうか。
写真が撮れない当時は記憶か想像で描き起こすしかなかったのかな。


暁斎は妖怪や戯画が上手すぎる。国芳のそれとはまた違う、国芳はモデルに忠実なところあるけど暁斎は頭の中で自由奔放に動いてるのを描いてみたらこうなったって感じ。
でも人物は骨格から描くぐらいだから、もしかしたら緻密な計算の結果ああなったのかもしれない。
暁斎百鬼画談』という長い折本があったんだけどそれに出てくる妖怪たちがめちゃくちゃポップ、意味分からんぐらいポップ。色もファンシー。きゃりーぱみゅぱみゅが好きそう。
そこの展示はずっと人が集まっていました。


暁斎でいいなあと思った絵は『骸骨の茶の湯』。
漫画絵が多いからか今回はあまり色入れされたザ・浮世絵的なものが少なくて、この絵も墨一色なんですが、それでもマジ渋い!かっこいい!と思った絵でした。
それから『暁斎楽画 第一 地獄の開化』、『暁斎楽画 第四 極楽の文明開化』も凄く良いです(これは錦絵)。
文明開化によって、地獄では角を切られる鬼、ザンギリ頭にさせられる閻魔/極楽浄土では郵便配達や西洋風の人力車など、新しい職に就く亡者や鬼たち。

そういえば暁斎の絵はタイトルや本人のサインが絵の中になかったような。歌川一門は皆似たようなレイアウトだから、派によって違うのかな。



全体的に可笑しみがある絵が多くて観てて楽しかった。
GWの予定はこの展示を観に行くことだけだったので、残りをどうしようか考え中です。