装飾は流転する 「今」と向き合う7つの方法 - 東京都庭園美術館、2/2

f:id:neovillage:20180202145845j:plain

東京都庭園美術館はちょうど1年振り。
去年は『並河靖之 七宝』で、あれは2017年で断トツに行ってよかったと思った展示だったので、東京都庭園美術館に寄せる期待値がとても高い。

 

そして今回は装飾がテーマ。われわれはなんのために装飾を施すのか?装飾品をみてなにを感じるか?
7名のアーティストによるそれぞれの作品群は、『装飾』の解釈もその表現手法もバラエティに富んでいて、全部の感想を記すのはむずかしいので、特に印象に残った2名について。

 

コア・ポア

f:id:neovillage:20180202155715j:plain

一見、ペルシャ絨毯をそのまま模した絵画なのかと思うが、

f:id:neovillage:20180202155732j:plain

よく見ると、浮世絵やエジプト壁画、ギリシャ神話など、さまざまな文化圏のモチーフを配置していることがわかる。
こんなところで浮世絵を見れると思わなかったのでうれしかった。

ごった煮のようでもひとつにまとまっている不思議な作品は、イラン人の父、イギリス人の母をもち、イギリスで生まれ育ったのちロサンゼルスに移住した彼という一人の人間をそのまま表すかのよう。

最初観たとき、ペルシャ絨毯を絵画に変換し、かつ古さを出すためにわざと削る、という作業をする意図がわからなかったのだけど、アーティストトークを見て、これらはコア・ポアが自身を表現するための工程なのだとわかった。装飾は、自分がしっくりくるために必要なもの。
「文化と文化の中間に存在する者として生きる」という言葉に親近感を覚えた。

 

ニンケ・コスター

彼女のトークもおもしろいので上記リンクから見てほしい。

f:id:neovillage:20180202171938j:plain

これはシリコーンゴムでつくられていて、さわると想像よりやわらかかった。座ったりすることもできる。


彼女はアートを身体に引き寄せて考えるのがうまくて、たとえば「立派な装飾が施されている王宮のあの天井に寝転んでみたい」という発想から、実際の天井にゴムを塗って型取りをして固めて、ほんとうにベッドのようなものをつくってしまう。装飾は、そこから想像力を掻き立てさせるもの。

写真の作品は、日本の出島が、日本とオランダの文化交流の架け橋となっていたことを表現したもの。
学芸員さんに解説していただいて、「へ~不思議ですね…」「ほんとうにね…」と言いながら、二人でぼよんぼよん触ってた。おもしろかった。

 

東京都庭園美術館は明治に朝香宮邸として建てられた旧邸宅で、フランスのアール・デコ様式を取り入れている。装飾が館内の細部まで現存されていて、今回の展示作品と、元々の館の装飾の境界線がたまにわからなくなった。おそらくそれを狙ったのかなとも思う。
つまり、館自体が装飾に意味を求めたひとつの「作品」なのではないか。
という考えに至ったところで頭がバーッとなり、一気に腹落ちした。なるほど、この美術館でないとできないテーマだったな…と。

 

「装飾」という言葉だけ見ると、どうしても表面的なものというイメージがあるけれど、今回の展示ではアーティストたちがそれぞれの解釈で装飾を内面化して、作品を創り上げているということが伝わった。
自分にとっての「装飾」は、なにかひとつ装飾を施す/身につけるごとに、自分の引き出しが一個開く、または自分を映すカメラがひとつ増える、みたいなイメージがある。なりきるとまではいかないけど、歩き方がちょっと変わるというか、演出装置のような意味合い。

 

ということで今回も高揚してとても満足した。新館の展示は七宝のときとはまた変わった感じで、美術館としてのいろんな顔を見れてよかった。
2階は小部屋が多くて探検している感じになるし、庭も広い。冬の時期の展示しか行ったことないから、夏以降にも行ってみたい。